名店とルアー購入の想ひ出


最近、何かのきっかけで
「そういえば今、スタンレーのバイブラシャフトを、なんならその1/8を売ってる店ってあるのかな」
と思い立って調べてみたことがあった。
端的に、ウェブ通販用にそれを売っているルアー・ショップは見当たらなかったのだが、
ルアー・ショップとそこでの購入品についていろいろと懐かしく思いだすことがあったので
今回はそれをつらつらと書いてみる。
東京都南部、及び千葉茨城の当該近辺に住む人には少しは参考になることもあるかもしれないし。



たまたま大田区に住んでいる時、友人にバサーがいて手ほどきを受けられたのは私の幸運だった。
私はまず渋谷の上州屋、およびその特化型店舗キャンベルで多くのルアーに出逢ったのだ。
最初の馬鹿買いをしばらくして脱却すると
キャンベルでシャッドラップ、そのシャロー、ラトリンラップ、ノーマンのDBN、TN、DTNを得た。
殊にDBN、DTNはワゴン・セールで280円くらいで売ってあり
ピーク時には月に2回〜4回ほども漁りに行っては期待カラーのものを5個10個と買ったものだ。
やがてキャンベルのほうは潰れたが
当時買った100個にも及ぼうDBN、DTNはその後10年近くもストック枯れすることがなかった。
上州屋のほうでは、たしかヒルデブラントのザ・ブレードとブラックジャックに出逢ったはずだ。
また、私には珍しいことに「定価」で買ったラパラのチーム・エスコもここが初見だったろう。



バス釣りを始めてルアーを買うのが楽しくてしょうがない最初の2、3年、
私は渋谷のサンスイ、大森のキャスターハウスを自力で発掘し、
また友人Nから(当時)武蔵小山のギルを教えてもらった。
上州屋系2店にこの3店が加わったことで、私のルアー探索行は一気に5倍にも拡がっただろう。
キャスターハウスではたしか580円ほどの安値に惹かれて特に知らないままバイブラシャフトを買った。
最初のロングAも、マンズのベイビー・ストレッチ・ワン・マイナスもここだったような気がする。
サンスイは上述のブラックジャックを定期的に買う店、ヒルデブラントのブレードを買う店、
そしてホライズンのゴーストミノーに出逢わせてくれた店、となった。
ボーマーのディープAことファットフリーシャッドも出逢いはここだった。
メインとまでは言わずとも中古が目玉の名店ギルでは
雑誌で観ただけ、他店で見送っただけの名品・珍品を思い出せないくらいたくさん買った。
既に自分定番となっていたラトリンラップやロングAはほぼここばかりでの購入となったし、
ルーハー・ジェンセンのスピードトラップ、
ラパラのハスキー・ジャーク、サブワート、ミッドワートあたりは
中古もしくは安価な新品で、ここでこそで買う気になったものだったろう。
(後述するが)ファーリー・フィッシュ・ベイツのラビット・ヘア・スピナーベイトなどは
新品で、私的にお呼びでない1/2で、1000円超、などであったら到底買いはしなかったはずのもので
夏と冬の大バーゲン時に100円で売ってあったればこそ手を出したという好例だ。
ファーのスカートをかっぱぎ、バイブラシャフトに小分けに巻き替えたのが
その後の私のスピナーベイティングの大きな変化のきっかけとなっている。
ちなみにこれも後述するが、偶然にバイブラシャフトの1/8を最初に入手したのも
ここのバーゲン名物だったワイヤーベイト100円均一のコーナーからだった。
このギルという店がなかったら
私のバス釣りは全般においてずっと保守的な「守り」のそれになっていたことだろう。



同じく武蔵小山のバスポンド、少し離れての碑文谷のザ・タックルボックスは
値段や傾向が私の「普段使い」のルアー群から結構遠いものではあったが、
時たま思い出したように、新奇なものに心が向いた時に訪れるのにいい店だった。
先述のファーリー・フィッシュ・ベイツのラビット・ヘア・スピナーベイトは
ザ・タックルボックスが輸入販売する店の嚆矢だったろうし、
おそらくは私がギルで買った中古のそれは、誰かがここで買って手放したものだろう。
バスポンドではたしか
900円ほどのお値打ち価格でアーボガストのスパター・バグを買った記憶がある。
日本中でも10店で売ってあるかどうかのそんな珍品を「中古価格」で買える店はそうあるまい。



たしか開店時の広告を雑誌で観て訪れてみた上野のスーパーブッシュは
アウトドア用品やルアー・メイキング用の器具・パーツまで広く取り揃える傑物の大型店だった。
渋谷上州屋の3、4(?)階と神楽坂にあった雑貨店ギャラクシー・ロケットを併せたような
エンスーでマニアックな趣味性とコアな実用性を併せ持つような店だったのだ。
バズ・ペラを何種類も、とかエレクトリック・リード・メルターまでも、とかの品揃えは尋常でない。
コレクター的なマニア側面は薄い私だが
ニルズマスターの新品などはここで初めてお目にかかったのではなかったろうか。
リーフ・ランナー社のメタル・バイブ:シケーダもたしかここで買ったのだった。



結果的に1度だけ、釣行の帰途に寄っただけとなったが
取手の一竿堂ではバイブラシャフトのヴァリエーション豊かな品揃えが圧巻だった。
たしかその頃にはもう自覚的に1/8サイズを探していた私だったが、
この訪問時には1/8はダブル・ウィローしかないか何かで、迷いつつも見送った覚えがある。
既に私は以前からのストックのバイブラシャフトを全部タンデム・ウィローに組み直しており、
その際にあの売りのテイパード・シャフトの先端が少しく傷むのを嫌っていたのだった。
取手は私には釣行で使う機会の少ない駅だったからということはあれど
今思えば何度か通っておけばよかったなと悔いが残る。



おそらくはブームの凋落のせいだけでなく、日本社会全体に亘る貧困化と文化/商業の空疎化により
バス・フィッシング文化を支える一翼であるルアー・ショップ群は
閉店や一極集中型の ”メジャー”化、高価格品揃え化の一途にある。
売れるか売れないか、売れて利ざやがどれだけ付けられるかを鑑みて
メガバスの、ジャッカルの、OSPの製品を多く置くのがシュアな道、とならざるを得ない、のだろう。
もしあなたの行きつけの店がそれに抗う気骨の店であったら
できるだけ買い支えてあげてほしいと祈るばかりだ。



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